アーユルヴェーダ体験記:南インドの食事で学んだ「食べる瞑想」

アーユルヴェーダ日記

「食事が適切であれば薬は要らない」——これは5000年の歴史を持つアーユルヴェーダの基本理念です。南インドのアーユルヴェーダ施設で過ごした日々で、私はこの言葉の深い意味を実感することになりました。

現代社会では食事は「栄養を摂取する行為」として捉えられがちですが、アーユルヴェーダでは全く違います。食べることは自然のリズムと自分の体を調和させる、いわば「食べる瞑想」なのです。

食材選びは宇宙との対話

アーユルヴェーダでは、旬の食材や地元で採れた食材を重視します。これは単なる「地産地消」ではありません。その土地の気候やエネルギーが凝縮された食材を摂ることで、私たちの体は自然に環境に適応できるという考え方があるのです。

現代の「ローカル食材」ブームも、実は5000年前から続く古代の智慧だったんですね。

6味7色の法則:味覚を通じた体調管理

アーユルヴェーダの食事では「6味7色」を意識します。酸味・甘味・塩味・辛味・苦味・渋味という6つの味と、7つの色彩を一日の食事に取り入れることで、自然とバランスの取れた栄養摂取ができるのです。

このこれはまるで「食べる色彩療法」のよう。現代の食事が茶色と白ばかりになっていることを考えると、この多様性の豊かさには目を見張るものがあります。栄養バランスを頭で考えるのではなく、視覚的に判断できる実用的な知恵でもあります。

太陽と胃袋の不思議な関係

アーユルヴェーダでは、人間の消化力は太陽のエネルギーと連動していると考えます。そのため理想的な食事量は朝:昼:夕=1:2:1の比率。太陽が最も高い正午に一番たくさん食べ、夕方は控えめにする。これは日本の「腹八分目」の考え方とも通じています。

また、胃の中は常に「食べ物50%、水分25%、空間25%」に保つのが理想とされています。食べすぎを防ぎ、消化を助けるための古代の知恵です。

アーユルヴェーダ施設での食事

朝食:穏やかな目覚めから

南インドの朝は、焼きバナナ、ドーサ(米粉のクレープ)、ココナツミルクカレー、野菜スープから始まります。特にドーサは薄くて香ばしく、まるで「食べられる朝日」のような美しさ。

南インド定番の朝食。

そして最後に登場するのが、真っ黒なチャイ。一口飲むと頭の中の霧が一気に晴れて、新しい一日への準備が整います。

昼食:味覚の大冒険

一日のメインイベントである昼食は、毎回小さな探検でした。カレー2種類、野菜炒め、蒸し野菜、サラダという多彩なラインナップ。使う野菜もスパイスも毎日変わるので、全く飽きることがありません。

印象的だったのは「ウプマ」という料理。セモリナ粉を蒸した主食で、クスクスのような食感ですが、スパイスとハーブが織りなす複雑な味わいは忘れられません。

中央がウプマ

夕食:静かに一日を閉じる

太陽が沈むにつれて、食事もシンプルになります。ある日の夕食はトマトビリヤニでした。バスマティ米の細長い粒にスパイスが絡み、一粒一粒が小さな物語を語りかけてくるようです。ビリヤニ以外にも、軽やかなダル(豆カレー)や季節の野菜料理など、体に優しいメニューが用意されていました。


アーユルヴェーダの食事法は、単なる健康法ではありません。自分の体の声に耳を傾け、自然のリズムと歩調を合わせる生き方そのもの。現代人が忘れがちな「食べる喜び」を思い出させてくれる、心豊かな体験でした。

コメント

  1. Mia (Area 52) より:

    Nice share!

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