インドでのアーユルヴェーダ体験は、治療だけでなく生活のあらゆる面で「健康と調和」を大切にする哲学に触れる旅でした。その中で意外に印象に残ったのが、毎日の部屋掃除に込められた細やかな気配りです。
笑顔で迎えてくれる掃除スタッフとの出会い
アーユルヴェーダ施設に滞在中、毎日午前11時頃になると決まって部屋に二人の掃除スタッフが訪れます。建物ごとに担当が決まっていて、私の部屋には毎日同じ二人が来てくれました。
ベッドルームを担当するラダーさんと、バスルームを担当するシャイニーさん。二人とも常に笑顔で、温かな挨拶を交わしてくれます。言葉の壁はあっても、彼女たちの親しみやすさのおかげですぐに心を通わせることができました。
最初は名前を覚えるのに苦労しましたが、毎日顔を合わせるうちに自然と親しくなり、簡単な日常会話を楽しむようになりました。彼女たちの笑顔が、インドでの生活に安心感をもたらしてくれました。

部屋に漂う不思議な香り
ある日、掃除が終わった後の部屋に入ると、爽やかで心地よい香りが漂っていることに気づきました。単なる掃除用洗剤の香りとは違う、自然の清々しさを感じる香り。不思議に思って、翌日掃除の時間に尋ねてみました。
「この良い香りは何ですか?」
ラダーさんは嬉しそうに、掃除用のバケツの中を見せてくれました。水の中に数滴のレモングラスのアロマオイルが入れられていたのです。

レモングラスの知恵—掃除と健康を結ぶ架け橋
レモングラスのアロマオイルは、単に良い香りをつけるためだけではなく、アーユルヴェーダの知恵が活かされた選択だったのです。
この爽やかな香りのハーブには、抗菌・抗真菌作用があります。モップや雑巾がけに使う水にレモングラスの精油を数滴たらすことで、自然な方法で部屋を清潔に保つ効果があるのです。特に湿度の高いインドでは、水虫などの真菌対策としても重要な役割を果たしています。
部屋を素足で歩き回っても安心できるのは、このような気配りがあってこそ。さらに、除菌や雑菌によるニオイ対策、そして虫よけの効果もあるそうです。一つのオイルでこれだけ多くの効果が得られるなんて、とても合理的だと感心しました。

清潔さへのこだわり
掃除スタッフの仕事は丁寧で行き届いています。ベッドのシーツは毎日取り換えられ、熱湯消毒されたものが使われるので、いつも清潔な寝具で眠ることができました。インドという国に対して持っていた「衛生面が心配」という先入観は、この施設での体験でいい意味で裏切られました。
綿の肌触りの良いシーツは、化学繊維のような暑苦しさがなく、南インドの暑い気候にもぴったり。自然素材へのこだわりも、アーユルヴェーダの理念と一貫しています。。
日本での生活に取り入れたい知恵
この「レモングラスの水」による掃除方法は、ぜひ日本に帰ってからも取り入れたいと思いました。化学成分たっぷりの市販の洗剤に頼るのではなく、自然の力を活かした掃除方法は、環境にも体にも優しいはず。
毎日綺麗に掃除された部屋で過ごせたことは、治療と同じくらい大切な「癒し」の時間でした。心と体の健康を考えるアーユルヴェーダの哲学は、掃除という日常の一コマにも確かに息づいているのです。
帰国後、自宅でレモングラスのアロマオイルを使って掃除をするたび、インドで出会った二人の笑顔と、あの爽やかな香りの部屋を思い出しています。
コメント