「今日はナヴァラキジを受けていただきます」
ナヴァラキジ(Navarakizhi)は、ケララ州のアーユルヴェーダ施設で提供される代表的なトリートメントの一つです。特に肩こりと腰痛に悩まされていた私に、医師が処方してくれた施術でした。
ナヴァラキジとは:ケララ特産の赤米を使った筋肉痛緩和トリートメント
ナヴァラキジの「ナヴァラ」とは、ケララ州特産の赤米の品種名です。この特殊な米は、わずか60日という短期間で収穫でき、栄養価が極めて高いことで知られています。「キジ」は布で包むという意味で、つまりナヴァラキジとは「ナヴァラ米を布で包んだもの」を指します。
具体的には、このナヴァラ米をハーブの煎じ液と牛乳で煮込み、お粥状にしたものを布袋(キリ)に詰めて使用します。それを全身に押し当てることで、米とハーブの薬効成分を皮膚から浸透させていくのです。

アーユルヴェーダでは筋肉の強化と痛みの緩和を目的とした施術として位置づけられており、特に慢性的な筋肉痛や関節痛に対して効果的とされています。
ナヴァラキジの効果:筋肉の痛みから美肌まで
このトリートメントには、多岐にわたる効果が期待されています。
筋肉の強化と緩和: 温かいお粥が筋肉を深部から温め、緊張をほぐします。同時に、筋肉組織に栄養を与えることで、強化も促進されます。慢性的な肩こりや腰痛など、筋肉の痛みに特に効果的です。
関節痛の緩和: 関節の硬直や痛みを和らげる効果があります。特に慢性的な痛みに対して有効とされています。
血液循環の促進: 熱と圧力が加わることで、血流が改善されます。これにより、冷えの解消や代謝の向上が期待できます。
滋養強壮: ナヴァラ米の豊富な栄養素が皮膚から吸収され、身体全体に滋養を与えます。疲労回復や体力増強に効果的です。
肌の美容効果: 牛乳とハーブの成分が肌に潤いと栄養を与え、ツヤと弾力を向上させます。湿疹などの皮膚トラブルの改善にも効果があるとされています。
神経系の鎮静: 温かさと心地よい圧迫感が、過剰に活性化した神経系を落ち着かせます。
特にヴァータ(風のエネルギー)の乱れに効果的で、乾燥、冷え、不安定さといったヴァータ過剰の症状を改善します。

施術の流れ:温かさと栄養が全身を包む
ナヴァラキジは、いくつかの段階を経て行われます。
1. アビヤンガ(オイルマッサージ)
まず、温かい薬草オイルで全身をマッサージされます。このアビヤンガは、身体を温めて毛穴を開き、その後の栄養吸収を高める準備段階です。
2. キリによる発汗と塗布
いよいよナヴァラキジの本体、お粥の入った布袋(キリ)の登場です。二人のセラピストが私の両側に立ち、キリを肩、背中、腰、脚と、全身をくまなく当てていきます。特に痛みのある部位には、やや長めに押し当てられます。私の場合、肩と腰に重点的に施術してもらいました。

温かいキリの、クリーミーで柔らかい独特の感触が心地よいです。マッサージというより、全身が栄養パックで包まれているような状態。ナヴァラ米、ハーブ、牛乳の成分が、じっくりと肌に浸透していきます。
温かいお粥の重みと圧力が、筋肉の深部まで届いていく感覚。凝り固まっていた部分が、少しずつ緩んでいくのがわかります。
3. 仕上げのオイル塗布
最後に、お粥を温かいタオルで丁寧に拭き取ってもらい、再び温かいオイルを薄く塗布されます。これは肌の保湿と保護のためです。
施術が終わった後の肌の感触は、驚くほどしっとりと潤って、柔らかくなりました。
体験して感じた効果:クリーミーな温かさの中で
施術時間は約60分。その間、私は半ば眠りかけていました。温かいお粥のクリーミーな感触が、想像以上に心地よかったのです。
施術後、最も顕著に感じたのは、肩と腰の軽さでした。慢性的な重だるさが、明らかに軽減されています。完全に痛みが消えたわけではありませんが、可動域が広がり、動かしやすくなったのは確かです。
ナヴァラキジは、単に筋肉の痛みを緩和するだけでなく、筋肉組織そのものに栄養を与え、身体全体の機能を向上させます。全身にエネルギーが補給されたような感覚がありました。

ナヴァラ米という宝:ケララの伝統が生んだ薬食同源
このトリートメントの核となるナヴァラ米は、ケララ州の伝統的な農業の産物です。古典文献にも記載されており、消化が良く、身体を温め、組織に栄養を与える性質を持つとされています。近年、このナヴァラ米の栄養価の高さが科学的にも注目され、研究が進められています。抗酸化作用、抗炎症作用、免疫強化作用などが確認され、伝統的知識と現代科学の接点となっています。


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