インドのアーユルヴェーダ施設での滞在中、最も印象的だった体験の一つが料理教室です。単なる料理レッスンを超えて、5000年の智慧が込められた食の哲学に触れる貴重な時間となりました。今回ご紹介するのは、南インドの伝統料理「アヴィアル(Avial)」です。
アヴィアルとの出会い|色とりどりの野菜が奏でるハーモニー
料理教室の日、テーブルの上には色とりどりの野菜が美しく並んでいました。きゅうり、にんじん、いんげん豆、冬瓜の他、ドラムスティック(モリンガの実)、生のプランテン(料理用バナナ)、生マンゴー、そしてエレファント・フット・ヤムなど、日本では見慣れない野菜もあります。

「アヴィアルは南インド、特にケーララ州の代表的な料理です」と、穏やかな笑顔を浮かべた料理の先生が説明してくれました。「ただの野菜料理ではありません。アーユルヴェーダの原理に基づいて作られた、心と体を整える薬膳料理なのです」

調理を通じて学んだアーユルヴェーダの智慧
野菜の切り方にも意味がある
まず驚いたのは、すべての野菜を約5センチの細長い棒状に揃えて切ることでした。参加者の一人が「なぜこの形なのですか?」と尋ねると、先生は興味深い答えを返してくれました。
「アーユルヴェーダでは、食べ物の形や色、調理法すべてに意味があります。この細長い形は消化しやすく、また見た目の美しさが心の平安をもたらすのです」
確かに、同じ大きさに揃った野菜は美しく、調理中も心が落ち着いていくのを感じました。
ココナッツペーストに込められた智慧
アヴィアルの要となるココナッツペースト作りでは、石臼を使いました。フレッシュなココナッツ、青唐辛子、クミンシードを手で挽いていきます。リズミカルな石臼の音が響き、立ち上るココナッツの甘い香りが広がります。
「機械を使わず手作業で行うことで、食材にポジティブなエネルギーが宿ります」という先生の言葉に納得です。
野菜の個性を活かす調理法
「野菜は柔らかくなっても、型崩れしないのが理想です」という先生の言葉通り、火加減と調理時間への細やかな配慮が必要でした。また、「生マンゴーを使う場合は、その酸味に合わせてバターミルクの量を調整してください」というアドバイスからも、アーユルヴェーダの「バランス」を重視する考え方がよく伝わってきました。

仕上げに込められた祈り
料理の最後に、ココナッツオイルで温めたカレーリーフを上からかけるのですが、ジュっという音と共に香り立ち上ります。
「この最後の一手間が、料理に魂を吹き込むのです」という先生の言葉が、とても印象的でした。
完成したアヴィアルをは、これまで経験したことのない複雑で奥深い味わいでした。ココナッツの甘み、バターミルクの酸味、カレーリーフの香り、そして野菜それぞれの個性が絶妙に調和していました。
アヴィアル(Avial)のレシピ
材料(4人分)
野菜(お好みで調整可能)
- きゅうり:1本
- ドラムスティック(モリンガの実):1本
- 生プランテン(料理用バナナ):1本
- 冬瓜:3/4カップ分
- 人参:1本
- いんげん豆:6〜7本
- 生マンゴー:中サイズ5〜6切れ(お好みで)
- エレファント・フット・ヤム:100g
- バターミルク:大さじ2
- ターメリックパウダー:ひとつまみ
- 塩:適量
ココナッツペースト用
- ココナッツ(すりおろし):1カップ
- クミンシード:小さじ1/2
- 青唐辛子:3本
仕上げ用
- ココナッツオイル:小さじ2〜3
- カレーリーフ:数枚
作り方
下準備
- すべての野菜の皮をむき、約5cm長さの細長い棒状に切る
- ココナッツ、青唐辛子、クミンシードを粗めにすり潰してペーストを作る
調理手順
- 野菜を段階的に煮る
- 火が通りにくい野菜から順番に鍋(または圧力鍋)に入れる
- 圧力鍋の場合は2回笛が鳴るまで加圧
- 少量の水とターメリックパウダー、塩ひとつまみを加える
- ココナッツペーストを加える
- 作っておいたココナッツペーストを加える
- 数分間煮込んで火を止める
- 仕上げ
- バターミルクを加えてよく混ぜる
- 塩加減を確認し、必要に応じて調整
- ココナッツオイルで軽く炒めたカレーリーフを上からかける
初心者向けのコツ
- 野菜の食感:柔らかくなっても形が崩れない程度に仕上げるのがポイント
- 水分調整:ごく少量の水で蒸し煮にすることで、野菜本来の味を活かせる
- 酸味の調整:生マンゴーを使う場合は、その酸味に応じてバターミルクの量を調整
- 野菜の代用:日本で手に入らない野菜は、季節の根菜や葉物野菜で代用可能
日本での材料調達のヒント
- ドラムスティック → オクラや山芋で代用
- プランテン → じゃがいもや里芋で代用
- エレファント・フット・ヤム → 長芋や大根で代用
- カレーリーフ → インド食材店で購入、なければ省略可
このレシピで作ったアヴィアルは、野菜の自然な甘みとココナッツの風味、バターミルクの酸味が絶妙に調和した、身体に優しいアーユルヴェーダ料理の完成です。

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