北インドはナンやチャパティなどの小麦文化ですが、南インドは米が主食。それも、ただの白いご飯ではありません。朝昼晩、毎食異なる米料理が登場します。
米の多様性に驚く
「同じ米でも、こんなに違う料理になるんだ」と滞在初日から感心しました。米粉を使った料理、蒸した米、発酵させた米——調理法のバリエーションの豊かさは、日本の米文化とはまた違った奥深さがあります。
イディヤッパム(Idiyappam)
まず出会ったのが、イディヤッパムでした。見た目は素麺のような細い麺状のもので、米粉を練って蒸し器で蒸し上げたものです。ふわふわと柔らかく、ほんのり甘いココナッツの風味が効いています。朝食として、野菜のカレーやココナッツミルクと一緒にいただきました。

シンプルなのに飽きない味わい。消化に優しいので、アーユルヴェーダの食事としても理想的なのだそうです。
プットゥ(Puttu)
もう一つ印象的だったのが、プットゥです。米粉とすりおろしたココナッツを層状に重ねて蒸した料理で、円筒形の専用の蒸し器で作られます。切り口が美しい年輪のようになっていて、見た目にも楽しい一品。

ほろほろと崩れる食感は、まるでケーキのよう。バナナやチャナ豆のカレーと合わせて食べるのが定番で、甘さと塩気のバランスが絶妙でした。

ウップマ(Upma)
昼食や夕食にも登場したのが、ウップマです。セモリナ粉や米粉を炒めて作る、いわば南インド風のおかゆのような存在。マスタードシード、カレーリーフ、玉ねぎ、カシューナッツなどが加えられ、スパイシーで香ばしい味わいです。

優しい口当たりなのに、しっかりとした満足感がある。時間を問わず身体に優しく、まさにアーユルヴェーダ的な一品でした。
ウッタパム(Uttapam)
「これは南インド風のパンケーキだよ」と教えてもらったのが、ウッタパムです。発酵させた米と豆の生地を使った、ドーサに似た料理ですが、ドーサより厚めでふっくらとしています。

トマト、玉ねぎ、青唐辛子などの具材を生地に混ぜ込んで焼き上げるので、野菜の甘みとスパイスの香りが一体となった味わい。サンバルやチャツネと一緒に食べると、朝から元気が湧いてきます。
ビリヤニ(Biryani)
そして忘れてはならないのが、ビリヤニ。スパイスで炊き込んだ香り高い米料理で、南インドでは野菜たっぷりのベジタリアンビリヤニをいただきました。

サフランの黄金色、ターメリックの鮮やかな色合い、そして立ち上る複雑なスパイスの香り。一口食べれば、米一粒一粒にスパイスが染み込んでいるのがわかります。これだけで完結した一皿料理として、満足度の高い食事でした。
米料理の奥深さ
三食すべてが米料理でも、まったく飽きることがありませんでした。それどころか、「次はどんな米料理が出てくるんだろう」とワクワクする日々。南インドの人々にとって、米は単なる主食ではなく、創造性を発揮する素材なのだと実感しました。
この豊かな米文化が、身体を整えるアーユルヴェーダの食事哲学とも深く結びついているのです。

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