新聞の結婚広告から見るインドの変化|伝統と現代が交差する恋愛事情

インド旅行のヒント

南インドのアーユルヴェーダ施設での朝は、穏やかに始まります。部屋に届けられるのは地元ケララ州のローカル紙。

ケララ州のローカル紙 THE HINDU

ある週末、新聞のあるページに目が留まりました。そこには、日本ではほとんど見かけない種類の広告が、びっしりと並んでいたのです。

新聞に並ぶ「花嫁募集」「花婿募集」

「花嫁募集」「花婿募集」。一面の半分近くを占めるこれらの広告は、「ソウルメイト」というロマンティックな名前のセクションとして独立していました。小さな枠の中に、年齢、身長、学歴、職業、宗教コミュニティ、そして連絡先が簡潔にまとめられています。

ソウルメイト

特に目を引いたのは、「エリートカップル」という特設コーナーでした。ここに掲載されている広告は、他のものよりやや大きめの枠です。一例を挙げると、こんな具合です。「EZAVA 35歳、163cm、大学院卒、ドバイ在住、父は事業家、家族は経済的に裕福。価値観が合い、高学歴の相手を探しています。電話番号 xxxxxx」

エリートカップルの募集広告

カーストと宗教コミュニティの表示

広告の冒頭に記されている「EZAVA」「NAIR」「MARTHOMA」などは、南インド・ケララ州の宗教コミュニティやカーストです。インドでは伝統的に、同じコミュニティ内での結婚が推奨されてきました。親が子供の結婚相手を探す際、まず確認するのがこの所属です。新聞広告では、この情報を冒頭に明示することで、同じコミュニティに属する家族からの連絡を期待しているのです。

一方で、「caste no bar」という記述も散見されました。これは「カーストを問わない」という意味です。伝統的な枠組みにとらわれない相手探しを望む、比較的リベラルな姿勢を示しています。

20年前の記憶:新聞で見つけた医師と結婚した友人

この新聞広告を眺めていて、ふと20年ほど前の記憶が蘇りました。当時、インド人女性の友人が医師と結婚したのですが、彼女はこう言っていたのです。「『ドクターと結婚したい』と親に頼んだら、新聞で相手を見つけてくれた」と。彼女はとても美しく、頭も良い女性でした。相手ならいくらでも見つかりそうなのに、なぜ新聞広告なのだろう。当時の私はそう思っていましたが、今なら理解できます。インドの伝統的な結婚観では、結婚は個人と個人の結びつきではなく、家と家の結びつきです。親が子供の幸せを考えて相手を選ぶことは、愛情の表現であり、家族の責任でもあります。彼女の親は、娘の希望を叶えるため、医師という条件で新聞広告を通じて相手を探したのでしょう。

担当ドクターに聞いてみた:現代の結婚事情

新聞広告のことが気になり、私は担当医のDr. アヌジャに尋ねてみました。IT大国として知られるインドで、今の時代に新聞で結婚相手を探す人も少ないだろうとは思っていました。それでも、実際のところはどうなのか、確認したかったのです。「今でも多くの人が、新聞広告で結婚相手を見つけるんですか?」彼女は笑って答えました。「これで結婚相手を決める人なんて、2割もいないと思う。今は自分が選んだ相手と、結婚前にデートするし、SNSやマッチングサイトで出会ったりもする。私の周りでも、恋愛結婚の方が多いわ」。親が新聞広告を出すケースもあるけれど、最終的に決めるのは本人たち。そして、親もそれを尊重する時代になっているとのことでした。

インドのマッチングアプリ Indian Cupid

伝統と現代の共存

興味深いのは、新聞広告という伝統的な方法が完全に消えたわけではなく、現代的な方法と並存している点です。親世代にとっては、新聞広告は信頼できる方法として今も一定の価値を持っています。広告を出すには費用がかかるため、ある程度真剣な家族が掲載していると判断できます。また、宗教コミュニティやカーストの情報が明示されているため、価値観の近い相手を探しやすいという利点もあります。

一方、若い世代はSNSやマッチングアプリを活用し、より広い範囲で自分に合う相手を探しています。都市部では特にこの傾向が強く、カーストや宗教を超えた恋愛結婚も増えているそうです。

特にケララ州は、インド国内でも教育水準が高く、識字率もほぼ100%に達しています。女性の社会進出も進んでおり、経済的自立を果たす女性が増えています。こうした社会的基盤が、結婚観の多様化を支えているのでしょう。

たびこのプロフィール
たびこ

「30歳までに30ヵ国を旅行する!」と決め、20代終わりに公務員を辞めて中南米コスタリカに旅立つ。約2年バックパック一つで中南米15ヵ国を旅して、30歳までに30ヵ国の目標をクリア!
帰国してから8年ほど専業主婦として3人の子育てに専念しながら、家族と日本国内をあちこち旅する。その後は"旅する会社員"として休暇を利用して旅を続けている。
旅の目的地は観光地よりも、現地の人々が普通に暮らす場所が好き。ローカルな食べ物は昆虫でも何でも挑戦。

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